2016年01月

 元松下電器産業茨木工場。全ての建物が取り壊され、更地になっています。以前、周辺に住んでいた者にとっては、少し寂しい気がする。

 名神高速道路茨木インターチェンジに近い、この場所は地名も、茨木市松下町。昭和28年に茨木市からの企業誘致を受けて、ここにテレビ工場が開設されました。昭和33年にはカラーテレビの生産が開始され、やがては松下のカラーテレビ生産の主力工場として位置づけられました。

 私が中高生くらいの頃、今から30数年前頃には、海外からの要人が大阪国際空港(伊丹)に到着し、京都に向かう途中には、この工場を訪れるいうのが定番のコースとなった時期があり、ダイアナ元英国皇太子妃や中国の鄧小平氏などが訪れています。

 その後もプラズマテレビの製造工場として機能してきましたが、一昨年で生産も終了、撤退。約12万平米の土地の半分は、ヤマト運輸の配送拠点として活用され、残りは住宅地として分譲され話もあるらしい。
 
 京都から大阪、神戸に向かう171号線を走ってみると、今まで見知った工場が次々と縮小、撤退していることに気が付く。その跡地は、ほとんどがマンションや住宅地だ。この近隣では、やはり東芝が2008年に茨木市太田東芝町の工場を閉鎖し、住宅地開発が計画されている。

 ずいぶん前に大阪市のある担当者が、「工場が無くなって、環境が良くなったという人がいるが、大阪市内は御堂筋ですらオフィス用ビルがマンションに転換し、工場もマンションになり、住居は多いが、働く場所が無くなっていっていることに危機感を持たないのだろうか。工場がマンションに転換すれば、地方自治体に入る固定資産税は大幅に落ち込むことも、あまり知られていない。」と言っていたのを思い出す。

 東大阪市は、旧松下冷機の撤退を契機に、布施・高井田地区への工場誘致条例を策定した。豊中市は、伊丹空港騒音緩衝地帯に工場誘致を進めようとしている。ある市の市民へのアンケートを見ると、若い世代ほど地元の雇用創出を求めていることが判った。地域活性化の基本は、雇用の創出、そして税収を意識することが重要になってきています。

Bt0109

Bt0098_2

 「百貨店閉店ラッシュ 」と題してブログを書いたのが、2010年末だった。2010年6月に新潟市の大和百貨店が閉店になり、NHKの特別番組のお手伝いをしたのだった。

 さて、それから5年が経過した。インバウンド景気によって百貨店の売り上げは好調だというが、地方の百貨店にとっては厳しい状況が続いてきた。今回、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」のディレクターから、周南市役所が閉店していた百貨店の建物を仮庁舎に使うというニュースに関してコメントを求められたので、せっかくなのでブログに書いてみようと思う。

Photo

 前回にブログを書いて以降、2011年から昨年までの百貨店の閉店をまとめたものが左の表である。東京、名古屋、大阪といった大都市圏では、外国人観光客の増加による好影響を受けて業績が上向いているが、地方の老舗百貨店と呼ばれるところでは、そうした影響も少なく、厳しい状況が続いている。

 百貨店全体の売り上げは、1991年の約12兆円をピークに減少し、2014年には約6兆2千億円と半分近くまで落ち込んでいる。

 さて、地方の老舗百貨店の不振は、そのまま地方都市中心部の商店街の不振と繋がっている。特に長らく地方都市中心部の商業の核となってきた地元老舗百貨店の閉店は、そのまま集客力の低下を引き起こす。

 百貨店が閉店した後、その建物が解体され、新たな商業施設やホテル、マンションなどに活用されるのであれば、まだましであるが、そのまま空きビルとして放置されている事例も少なくない。

 そうした空きビル対策として、市役所など公的施設を移転させるという事例も見え始めている。例えば、2011年に閉店した旧福田屋百貨店栃木店に、栃木市役所が2014年に移転した。また、この事業のモデルとなったのは、2008年に閉店した旧さくら野百貨店石巻店に、石巻市役所が移転したものだ。これらはいずれも都市中心部の再活性化を図るために、市役所を移転し、さらに一階部分に食品販売店などを入れるなど、商業活性化も視野に入れたものだ。
 

 1970年代から1980年代の人口増加時代に、市役所や図書館、警察署など公共施設が次々に都市中心部から郊外に移転させた。当時としては、拡大する中心部域があり、それが正しい選択であった。しかし、地方部から先に人口減少と、都市中心部の縮小が顕在化するようになるにつれ、そうした公共施設を都市中心部に戻そうという動きが出てきた。一方で、百貨店など大型商業施設の撤退などで、都市中心部に空きビルが発生する事態となり、それらを公共施設に活用する動きが出てきた。新潟県長岡市などもその例である。

 もちろん、都合よく空きビルが発生し、それが耐震基準に合致し、新築するよりは低額で公共施設に転用できるという事例が多いわけではない。しかし、こうした公共施設が都市中心部に移転すると、少なからぬ職員や来庁者による経済効果が期待できるために、商店街関係者などの要望は強い。私のゼミの学生たちが活性化策の勉強をした神戸市新長田には、2019年度に兵庫県と神戸市合わせて約1000人の職員が勤務する新庁舎の建設が、地元の要望などから決まっている。

 さて、昨年(2015年)夏に訪れた周南市の徳山駅周辺でも、この2016年1月4日から、2013年に閉店したままだった旧近鉄松下百貨店を、市役所仮庁舎として使用し始めた。3年間の期限付きだが、商店街の中心部にある建物で、市役所の業務を行うことになり、市役所職員や来庁者の飲食や購買が期待されている。商店街の空き店舗対策も様々講じられているが、人口減少や郊外型店舗との競合の中で、市役所仮庁舎がシャッターが閉まったままだった空き店舗に入ることによる活性化効果に期待は大きい。もちろん、期限は3年間であるから、その間の商店街、商業者の努力も求められる。

Kimg2137

  「2020年問題」というのが最近、取沙汰されている。団塊の世代の人たちが、いよいよ後期高齢者となり、死亡者数は150万人台に上り、出生数はその半分でしかない。(国立社会保障・人口問題研究所)

 今後、地方都市の人口の減少と高齢化は、様々な問題を深刻化させる。新たなものを作って活用するというよりも、既存の施設や建物をいかに有効活用するかを真剣に考える時期に来ていることは確かのようだ。
 

☆画像は周南市の旧近鉄松下百貨店(2015年6月)

Bt0109

Bt0098_2



 

 

 遅くなってしまったのですが、一般財団法人港湾空港総合技術センターの季刊誌「SCOPE NET」に中村研究室の紹介記事を掲載していただきました。

 取材当日は、ちょうど台風が午前中に直撃した日で、残念ながら大学の外観や大阪湾の景色を撮影していただくことはできなかったのですが、ゼミ生たちも参加して、和気あいあいとした雰囲気をお伝えできるのではと思います。

※PDFでご覧いただけます。

SCOPE NET Vol.72 2015 SUMMER (該当ページのみ) 

SCOPE NET Vol.72 (全誌 港湾空港総合技術センターのHPより)

Scoop3




 ⇒背景の窓が真っ白なのは、実は外は大雨だったせい・・・

 

 

   

   

   

  

   

   

    

  

  

    

 

Bt0109

Bt0098_2

 

Scan3_2

新年 あけまして おめでとう ございます

 昨年12月には、東京で「山形 川西町 豆の展示会」を開催するなど、年末は多忙を極め、ブログ更新を怠ってしまいました。

 「豆の展示会」は多くのみなさまのご協力をあり、入場者数は約1700名と予想を上回るたくさんの方に来ていただきました。心より感謝申し上げます。

 

 2015年は、他にもいろいろとみなさまのご協力、ご指導をいただき、さまざまな事業に関わらせていただきました。また、神戸国際大学の中村ゼミでは、夏のインターンシップ、神戸市の学生政策提言コンテストなどにも学生が参加させていただき、国立大学大学院などへの進学を決めた学生も複数出すことができました。これもひとえに、多くのみなさまのご支援の賜物と感謝しております。

 2016年も、相変わらずご指導、ご助言をいただけますよう、心よりお願いし、新年のご挨拶とさせていただきます。

                                        中村智彦

※画像は、昭和30年代の輸出用綿布につけられていたラベルです。  

   

   

 

Bt0109

Bt0098_2

↑このページのトップヘ