名古屋で開催された「第三回ものづくり日本大賞記念フォーラム」に行ってきました。フォーラムだけではなくて、受賞企業の展示ブースもあって、なかなか楽しいものでした。

総理大臣賞は、ヤマザキマザックオプトトニクス株式会社フェニックス研究所の最先端のコンピューター利用設計(CAD)技術を活用した「匠(たくみ)フレーム」。
従来は鋳物で作っていた工作機械の土台を、鋼板を組み合わせる方法で製造。粉じんの発生を抑え、製造コストも5分の1、そして強度も高いというもので、工作機械だけではなく建築物にも応用されているというもの。090928150040

この製品もすごいが、フェニックス研究所そのものもすごい。地上にあるのは、まるで公園のようで、ピラミッド型の入り口と、駐車場しかない。全部が地下。地下2階で、平面寸法65m×121mという巨大な地下工場だ。地下の温度が一定であることや、振動を抑えたりやクリーンルームとしの機能が高いという理由で、そうなったのだそうだ。
そうした最先端の研究所で開発されたのが、昔の大工の工法から発想を得たという匠フレームで、古くから伝わる木造建築の手法を最先端のCADCAMを使って、製造したものだ。

  一方、“釣瓶(つるべ)落とし式「無動力オートマチックトランスミッション組立生産ライン」の海外展開”で、経済産業大臣賞を受賞したのは、アイシン・エィ・ダブリュ株式会社。字面を見ただけでは、なんのことだか分からないのだが、要するに無動力でモノを動かしてしまおうというもの。古来から伝わる「からくり」の技術を取り入れて、無動力で、女性にも簡単に作業ができる方法を作り出すというもの。
   重りや、滑車、斜面などを活用したり、手だけではなくて、足を使って作業をしてくという工夫を取り入れていく。従来、人の力を極力排除して、機械による自動化を志向してきたが、これはその逆で、極力、動力を必要とする機械を排除して、人力でやっていこうというもの。もちろん、重量物もあるし、差し込んだりするのに力が必要なものも多い。それらを、からくりの技術で、小さな力で可能にしてしまったのだ。

   そのほかにも数々の受賞作が発表されたのが、ひとつ気がついたのは、既存の技術や、伝統的な手法を現代風にアレンジというか、活用しようということを、最先端の技術者たちが取り組んでいることだ。アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の事例は、海外工場の従業員も巻き込んでの開発だが、その経過を聞くと、少し不謹慎かもしれないが、まるで夏休みの工作を楽しむようなそうした雰囲気が伝わってきた。もちろん、夏休みの工作と違うところは、コスト削減や、CO2削減など実利を充分に伴っている点である。

   関係者用の控え室でお話をしていても、それぞれの企業の研究者や現場の従業員の人たちが自社の開発の経緯を楽しそうにお話されているのを伺っていると、日本のものづくりの底力はまだまだ現場にあると感じられた。

  環境問題がクローズアップされて久しいが、効率優先で進められてきた研究開発に「環境」という新しいファクターが加わることで、新しいアイデアが生まれてくるとすれば、それはそれでいいことではないか。

   会場で雑談をしていると、「太陽光発電パネルの解体、リサイクル技術は解決しておらず、今後、大量の廃棄物が発生する。リサイクル技術の開発が重要だ」、「電気自動車の開発のネックは、エアコン。現在の車でもエアコンの使用電力量が大きな影響を与えている。電気自動車用のエアコンが開発されないと夏場、どうするのか。」
などと、求められる新しい技術開発の話題が次々に飛び出した。「まだまだ研究開発のネタは尽きないですねえ」と会場が沸いていた。

    とかく暗い話題の多い、日本のものづくりだが、まだまだ現場発の底力を発揮しつくしていないのだと、少し明るくなって会場を後にした。

【これは、「ものづくり共和国メールマガジン2009年9月号で配信したものです。ご購読はこちらへ

 そのほか、展示されていたものの一部・・・・

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