2008年01月

 重要文化財級と評価されている大東市の平野屋新田会所が解体の危機に瀕している。買収した業者側は、すでに重機を入れて解体工事を進めているという。
 
【平野屋新田会所:所有者、解体工事へ 大東市の買い取り交渉決裂 /大阪 1月17日】

 平野屋新田会所は、18世紀初頭に建築されたものとされており、湿地を干拓した後にできた新田の管理をするための建物である。約6千8百平方メートルの敷地に、長屋門や建築当時の骨組みを残す母屋などからなり、文化庁も保存が可能となれば、国史跡に指定して、買取に対して補助を行うとしている物件である。東大阪市にある同様の鴻池新田会所は、すでに国史跡・重要文化財の指定ななされている。地元住民のグループが保存を訴えて活動を行い、大東市も、業者に買取交渉を行ってきたが、業者側が価格面で納得しなかった。

 「いったい・・・」と思ってしまう。20年前のバブル景気の時にも多くの貴重な建築物が失われてしまったが、この十年間もそれに匹敵するほどの開発が行われているのではないだろうか。今回の件は、行政が後手後手に廻ってしまった感もぬぐえ切れない。文化庁が国史跡に指定する方向を示していたにも関わらず、こうした事態が引き起こされたしまったことは、将来の第二、第三の事例発生のためにも、反省し、制度を改正しておくことも検討すべきだ。
 
 地域の文化や伝統の象徴という意味で、地元の人たちを中心に保存や継承が訴えられるのは当然であるが、もう少しフォーカスを引いて考えてみても、こうした歴史的価値のある建造物を保存することの意義が見出されるはずである。
 
 いずれの国でも都市の開発あるいは再開発と、歴史的な町並みあるいは建造物との協調は大きな課題となっている。しかし、例えば観光振興ということから考えてみると、歴史的な町並みや建造物を次々破壊して、新たなものを建設していくことは、資源を失っていくことを意味しないだろうか。
 
 もちろん、高層ビルのスカイラインや活力ある町並みも、観光客を誘致する一つではある。しかし、アジアのどこに行っても同じような町並みであることは、競争力を得ることを意味しないだろう。
 
 大阪経済の衰退を懸念する声が多いが、その中で海外からの観光客誘致を推進せよという意見も多い。しかし、ヨーロッパやあるいはいまやアジアの諸都市のように歴史的な景観を重視して町並みを整備しようとか、歴史的な建造物を一層活用しようという意見が、なかなか主流とならないのはなぜだろうか。(地道な活動を続けておられる方々が多いことは、力強いことではあるが。)

 空間の効率的な活用とか、経済波及効果とか、あるいは防災上の理由とか、そうした反論に掻き消されてしまっているのか、それとも歴史的景観などというのは京都や奈良にお任せしておけばいいという考えが強いのか。
 
 北ヤードの開発だとか、南港の開発だとか、彩都への企業誘致とか、決して全てを反対するわけではないが、「効率性優先の新規開発だけ」が、首都圏との競争に勝ち抜く術だという考え方だけで来たことが、今までの失敗だったのではないのだろうか。
 
 関西、あるいは大阪ならではという街の歴史、景観、文化と言ったものをきちんと考えて、評価して、残すべきものは、資金を投じてでも残していく、そういった考えをもっと大切にすることが、長期的には大阪経済の再興に繋がるのではないかと考えている。
 
 平野屋新田会所の命運は尽きようとしている。歴史と文化がそこにある建物が、図面でしかもう見られないとしたら、大きな損失ではないか。誰か、ポンと資金を提供する豪気なお金持ちは、もう大阪にはいないのだろうか。
 個人所有の場合、それぞれの財政事情から、突然、売却、解体といったことが発生することもある。そうした事態に備えることを、行政も我々も考えていく必要があることを、今回の悲惨な事例は示したと言える。

 金持ちがいないのなら、いっそみんなで大騒ぎして、資金を集めようではないか。以前、大阪の建築関係者が、「東京で解体されるとなると大騒ぎされて、保存が決まったり、移築が準備されるような物件が、大阪では、専門家の間だけで噂になって、次々消えてしまった。なぜだろうか、残念だ・・・」と嘆いていたことがあった。

 今回のことももっと広く全国に発信していく必要があるのかもしれない。平野屋新田会所だけではなく、大阪で、これからも同じようなことが繰り返されるような懸念がしてならない。結果として、私たちは貴重な将来の観光資源を失っていくのだ。そこで、「観光振興」などを主張しても、なにやらむなしい気がしてならないのだが。
 
 
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Wjpiqmmj  今日、日本福祉大学で4年生にとっては最後のゼミの日でした。ささやかにケーキとドーナッツと、お茶、コーヒーで卒業のお祝いをしました。
 
 実は、今年度四年生のゼミ生は2人しかいませんでした。この学年は、うちのゼミを希望する学生が極端に少ない学年でした。上級生と下級生に比べて、極端に少なくたったの2名。しかし、ある意味で、この2名は非常に恵まれた環境で、ゼミ活動をできたのかもしれません。
 
 大学院生たちや、上級生たちに、いろいろ指導してもらった2人でした。時には、喧嘩をしたり、2人がそれぞれ、それぞれの不満を言ってきたこともありました。
 
 今日が、ついにこの2人にとって、最後のゼミでした。
 
 ゼミを終わって、三人で飲みに行きました。思い出話で、話はつきませんでした。
 
 すべてが終わって、彼らと別れてから、言えなかったことをメールしました。
 
 「ほんとうにありがとう」
 
 先生の立場の人間が言うのはおかしいのかもしれません。しかし、彼らが何かの縁で、私のゼミに来てかたら、いろいろ場面で、支えられてきたのは、私かも知れないなあ、そう思います。
 
 しっかり就職活動もし、4月からは立派な社会人になる2人です。3年前から比べると、本当に成長しました。
 でも、複雑な気分です。「娘を嫁にやる気分」なのかも知れません。
 
 もちろん、彼らが成長していく背景には、すでに卒業した上級生諸君や、彼らを叱咤激励してくださった多くの人々、本当に感謝に絶えません。
 
 帰りの列車の中で、そうした思いが錯綜して、なんだか胸が痛くなりました。

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 1月12日(土)午後7時からNTV系で放送予定の『世界一受けたい授業SP』で、「工場見学」の授業を担当しました。

 今回は、前々からのわがままをやっと通してもらって「メッキ」の実演をスタジオでやります。

 「めっきがはげる[E:sad]」なんて、なんだか安物とか偽ものの代名詞みたいに使ってしまっていますが、実は、めっき、かなり奥が深いのです。

 それに私たちの生活に密着している工業技術なのです。ぐるりと部屋を見渡してみても、メッキが施されているモノはかなりの数。さらに、眼に見えない部分でもメッキの技術が生かされているのです。

 そして、メッキというと金属にするだけと思い勝ちですが、いまやありとあらゆる素材にメッキが施されているのです。一番上の写真は、ガラス素材に様々なメッキを施したもの。さらに、下の写真のように樹の葉にめっきをするなんてこともできるのです。

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 メッキと言っても、用途や目的に応じて様々な手法や、塗装などとも組み合わせての加工など、工業製品から芸術品まで多種多様です。ねじ一つとっても、本当にいろいろな種類の加工方法があるのです。

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 私たちが何気なく使っていたり、触れているものにメッキの技術がたくさん使われているのです。いわば「縁の下の力持ち」。
 化学反応を利用した加工方法なので、微細な加工が可能なため、現代のIT時代を支える重要な「ものづくり」技術の一つ。一方で、京都などでは仏壇仏具製造などから生まれた技術で、美術、工芸品の「ものづくり」技術としても重要な位置を占めています。
 一方で、その性質上、水質汚染など問題が発生することがありましたが、現代では有毒物質の使用削減や管理、浄化設備などの整備が進み、そうした環境対策の技術も世界的に高く評価されています。

 しかし、こうして高い技術があるのですが、完成品の中に含まれていて、私たちが気づくことが少ない技術でもあります。なかなか番組では、こうした技術は紹介するのが難しく、取り上げることが少ないのですが、できるだけ今回のように「ものづくり」を支える基盤技術も、子供たちに紹介できればいいなあと思っています。

 今回は、京都府鍍金工業組合様の全面的なご協力とネットワークを活用させていただき、スタジオでの実演が可能になりました。撮影当日は、組合から株式会社ハイビック平田の杉江秀生社長様と、メテック北村株式会社の北村隆幸社長様が東京まで駆けつけてくださり、早朝から深夜まで準備と後片付けをしてくださいました。また、工場の取材には、株式会社キョークロの寺田理社長様にも大変お世話になりました。このように組合挙げてご協力いただいた上に、さらにそのネットワークから、スタジオで紹介する高価なメッキ製品をお借りしたのが、株式会社ヒキフネ様(東京都葛飾区)。
 また、京都機械金属中小企業青年連絡会のみなさんのご協力も得ており、スタジオでの実演サンプルは株式会社最上インクス様のステンレス薄板板金の蝶、冶具は株式会社富士精工様製。ピアノ線の溶接には、株式会社クオリス様の溶接技術と、多くのみなさまのご協力をいただいております。

 みなさんのご協力とご教示で、今回の放送が可能になりました。

 このように、いつも工場見学のコーナーとはちょっと違った部分をお見せできるのではと思っております。(しかし、番組そのものが小中学生にも分かるようにという趣旨ですので、専門家の方たちからご覧いただくと、物足りないものになるのは、ご了承ください。また、今回は、めっきをする工程だけを簡単にして実演し、お見せします。実際のめっき工程は、非常に複雑で繊細なものです。)

 

0n3oh9fb 撮影が無事終わって。左から北村社長様、杉江社長様と。ほっとしています・・・

Cgmm0uac 舞台裏で準備をしたくださっています。放送ではあっと言うまですが、準備と片付けには本当に長い時間をかけてくださいました。本当にありがとうございました。

 

[E:pc]京都府鍍金工業組合さんのホームページには、おもしろいコーナーがあります。ぜひ、ご覧下さい。[E:smile]
『知っていますか? メッキのいろいろ!?』
『クイズDEメッキ』

 

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 最近、若者の人口が減ってきていることもあって、要するに経営上の理由もあって、多くの大学が社会人に門戸を開いています。
  
 受講者名簿なんかみても、年齢が書いてある訳ではなく、社会人入学の人がいるかどうかなんて、分からないのですが、前で講義をしていると、「ふーむ、もしかして、そうかなあ・・」なんて思ったりするわけです。
 
 もちろん、年齢がちょっと違うなあというのもありますが、若い学生たちとうなづくポイントが違っていていたり、話している方からしてみると、ちょっと怖いのは、なにかの拍子に「そりゃ、ちょっと違うんじゃないの」的な視線を感じたりするのです。
 
 で、今日、ある大学で最後の講義でした。終わって、いろいろ立ち話をしているのもなんだし、お茶でも行きましょうということになって行ってみると・・・
 
 一人は社労士さん。一人は自動車メーカー勤務経験のある理系。一人はスーパー勤務・・・・
 
 年齢は、ちょっとばらつきがありますが、どちらかというと同世代・・・
 
 いやーあははは・・・・[E:coldsweats02]
 怖い怖い、こんな人たちを前に偉そうに話をしていたのか・・・
 
 前で話をする人間にとっては、正直、社会人大学生というのは、怖いです。聞いてきたり、見てきた話をする人間が、実際に現場にいる人たちと対峙する訳ですから・・・
 
 「講義でおかしな点とか、ここは違うというところがあったら、レポートで指摘してください。」と言うと、三人の眼がキラリと光り、「えっ、いいんですか」。
 いや、あの、お手柔らかに・・・・[E:shock]
 
 社会で働きながら、講義に出席してくださる人たちがいるというのは、こちらにとっても非常に励みになります。それに自分も30歳で大学院に行った経験があるので、目を輝かしていろいろと話をしてくださる社会人院生の方たちを見ていると、いろいろ忘れてしまっていたことを思い出して、「がんばらねば」と思います。 
 
 いろいろと知識のある社会人大学生たちと、初めて学ぶ大学生たちの間には、多少、そのニーズに差があるでしょう。そこが、講義をする方としては、さじ加減の難しいところかなあと思うのです。
 
 若者が減ってきて、大学や大学院の敷居が低くなったことは、もちろんあまり良いことではないと嘆く方たちもいますが、しかし、一方で社会人になってから、勉強したいという思いの人たちに機会を拡げる点では良いことだと思います。
 
 様々な経歴の方たちが、集まって、いろいろ議論をしたり、様々な話題を提供しあったりというのは、非常に刺激的ですし、普通の大学生にとっても良い勉強の機会(というよりも、先生などと呼ばれている私にとって、良い勉強の機会)になります。
 
 大学と言うところは、別に世代が特定される必要もないし、先生だって、自分よりも社会経験のある学生から学ぶことがあってもいいのではないかと思います。(もちろん、教えることが全く無くなったら、商売にならないから困りますけど・・)
 
 これから、もし大学で教壇に立ち続けるのであれば、増えてくる社会人大学生にも満足してもらえるような講義内容を考えねばならないでしょう。そういう意味から、今のうちから社会人大学生の人たちに受講してもらっておくのが一番だなあと思ったのでした。
 
 [E:school]
 
 

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