2007年11月

28eohgge  『経営者会報12月号』(日本実業出版社)で、今泉英雄氏(今泉工業工業株式会社・代表取締役社長)と、今野辰裕氏(今野工業株式会社・取締役)との座談会の様子が掲載されました。

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 今泉工業は、埼玉県熊谷市にある精密板金業を手がける従業員30名の企業。工程を分業化するのではなく、従業員が多能工となり、最初の工程から最後の工程までを一人でこなすやり方を取り入れ、多品種少量生産をバブル経済期から取り入れてきた。秋田県にも関連会社・今泉ピーエスエム株式会社を持ち、取引先の多様化を進めてきた。今泉社長は、7,8年前から、「ITの浸透に伴って、営業のスタイルも大きく変わってきている。菓子折りを持って、日参すれば、熱心だと仕事がもらえたのは昔の話で、今の若い担当者にそんなことをすると逆効果。ホームページでの広報や、積極的な情報公開、そしてメールの活用が経営者にも求められている」というご指摘をいただいていたが、その先見性にはいつも感心させられてきた。

 一方、今野工業は、神奈川県川崎市にあるへら絞りを手がける従業員8名の企業。辰祐氏と、弟の靖尚氏の二人で、社長である母親と共に経営を支えている。今年には、工場を拡張。「へら絞り」という伝統的な技法を機軸に、最新技術の導入、ネット活用など、若い世代のアイデアを導入している。川崎市下野毛では、平成8年から地域の製造企業の若手経営者が『ものづくり共和国』というグループを結成、ITの導入促進や情報発信などに活躍しているが、辰祐氏と、弟の靖尚氏の二人はその立ち上げメンバーでもある。10年前と言えば、まだインターネットという言葉が「流行語」として取り上げられていた頃。その頃から、町工場でもITの活用をと取り組んできた。

 お二人とは、かれこれ10年近いお付き合いになる。今回、編集部から、首都圏で中小企業の「ものづくり」について経営者との対談をとお話があった時に、思い浮かんだのが、今年60歳になられた「先輩」としての今泉氏と、47歳の「同年代」としての今野氏だった。対談では、久々にお二人の経営に対する姿勢や、今後の「ものづくり」に対する展望を伺えて、私としても非常に興味深かった。

 中小規模の製造業企業の直面している状況は、厳しい状況が続いている。いわゆる「町工場」の廃業は増加しており、日本の「ものづくり」の基盤が崩壊するのではという悲観的な見方もある中で、堅実に経営を行い、後継経営者ががんばっている企業も現れている。大阪のある中堅企業の経営者に、先日、増加する廃業について質問したところ、「今の日本は、どんな局面も二極分化でしょう。駄目なところは、駄目になるし、生き残るところは生き残る。そういう時代でしょう。」とおっしゃっていた。今回の対談を通じても、生き残るために、さまざまな工夫を行い、努力を惜しまない経営者の姿勢に改めて、その強みを見る思いだった。

 対談の詳しい中身は、「経営者会報」をご覧いただくとして、その中で特に印象に残ったことを、ここでご紹介しよう。

 今泉氏、今野氏、お二人とも、10年ほど前からインターネットが中小企業の営業に大きな影響をもたらすと主張されていた。

 現在、両社とも新規取引先の多くは、インターネット経由になっていると言う。特にこの10年間は、産業構造の変化が激しく、取引先の業種も激しく変化すると言う。今野工業では、取引先は常時200社くらいであるが、毎年その3分の1が入れ替わるという。今泉工業でも、取引先が多業種に及んでおり、要求される水準もバラバラ、新規の仕事が多く、見積もり依頼を処理するだけでも大変だと言う。

 両氏とも指摘されたのは、産業構造の変化と国際化の影響で、従来製品であっても、その工法が変化することが多いということ。技術の変化だけではなく、大量生産から、少量生産へと国内での需要が変化することでも工程が変わるし、最近の原材料の高騰も無駄をなくすという面からの工法の見直しが行われていると言う。そのため、今、仕事が来ているからと、安住していると、思わぬ別工法に取って変わられる可能性があるので、常に情報収集が欠かせないという。

 ネット経由の受注トラブルに関しては、両氏とも「全く」と言っていいほど無いという。「営業に行って、頭を下げてもらってきた仕事ではないから、こちらから断ることもできる」ので、相手の条件に納得できないところがあれば無理をして受注しないので、トラブルの発生は未然に防ぐことができると言う。一般の人に販売するものではないので、相手のホームページや業界での噂、あるいは調査会社のデータなどを見れば、相手企業がどういったところかは、中小企業でも判断が付くと言う。

 国際競争の影響は、まだ対処できる範囲内であると両氏とも認識しているが、じわじわと追いついてきている諸外国の「ものづくり」は脅威であると言う。

「先日、フィリピンで製造された製品を見たが、多少の難はあるものの日本製と言っても十分な水準。」(今泉氏)

「中国の技術はまだまだだが、圧倒的に安い人件費が脅威。不良品を6割出しても、まだ利益が出ると言われた。」(今野氏)

 そして、二人が「ものづくり」中小企業の経営にとって最大の脅威として、指摘したのは人材の確保。

 「職業訓練校などは人気が無くて、統合されていくというが、卒業生への求人は30倍くらい。大手が人材を押さえてしまって、町工場には出る幕がない。また、技術者を目指す若者が急激に減っているようにも思う。」(今野氏)

 「若い人の気質が変わってきている。自分から考えたり覚えたりということが苦手になってきているようで、人材育成の方法もそれに合わせて変化させている。人材も地方ではまだ確保しやすいが、首都圏では、全く話にならない。」(今泉氏)

 機械でできない部分を見つけ出して、そこを技能者に担当させること、それこそが中小「ものづくり」企業の「メシのタネ」と指摘する両氏だが、その人材の確保、育成が年々難しくなっていく中で、どのような手を打っていくのだろうか。日本のものづくり、町工場の将来は、こうした意欲ある経営者にかかっているのだ。

 
 

 [E:danger]【今泉工業株式会社】 http://www.i-psm.co.jp/
 ⇒ナゼ何?精密板金加工 http://www.sakitama.or.jp/psm/index.html

 

[E:danger]【今野工業株式会社】http://www.herashibori.com/
 ⇒ものづくり共和国 http://monokuni.com/

 

[E:pc]中村も連載しています→ ものづくり共和国メールマガジン http://monokuni.com/mmaga/index.html

 去る10月27日に甲南大学で開催された大学コンソーシアムひょうご神戸『学生プロジェクトプラン・コンペ発表会』に、神戸国際大学の中村研究室自主研究グループ(藤本俊明、藤原良太)が参加しました。
 
 今回、提案したのは、三世代で楽しむ神戸旅行【Cross Generation Tour in KOBE】。
 最初は、バリアフリーなどをテーマに考えたのですが、調べ始めると、結構、施設、情報とも充実しつつあるということがわかり、それならば高齢者と共に楽しむ旅を考えてみようということに・・・・そうなると、おじいちゃん、おばあちゃんたちと、お母さん、お父さんたちと一緒に旅行っていうのは、どうよ!ということで、男二人が神戸の町を現地取材して、提案までこぎつけました。
 
 連日、深夜まで研究室で練習したかいがあったか、当日は、優勝賞と副賞もいただき、元気に凱旋してきました。

 当日のプレゼンで使用したパワーポイントは、こちらです(pdf形式です)→
「世代を越えて楽しい旅先・神戸」

 中村ゼミでは、旅やショッピング、産業振興などについて、学生たちの楽しくて、新しいアイデアを発信していきたいと思っています。

Zwr5razu  関西国際空港について議論する時や、中部国際空港について議論する時、あるいはほかの国内の空港についての議論をする時に、時々、疑問に思うことがあります。それは首都圏の航空事情を勘案しているのだろうかという点です。

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 10年以上前、関西国際空港が開港する前です。航空会社に勤務していたのですが、海外に行っても航空関係者は、関西国際空港の建設には疑問を持っていました。
 どの航空会社も首都圏への乗り入れを希望しており、仮に関西に大きな空港が完成し、乗り入れが容易になっても、それはあくまで、「代替」でしかないということなのです。

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 一般の方は、あまりご存知ないかもしれませんが、航空会社にとって重要なお客は、ビジネスクラスに乗る人たちです。格安ツアーに参加するエコノミーの、それも低価格のお客は利幅も薄く、いくら増加してもたいして収益を生まないのです。もちろん、こうしたエコノミー客を対象にした格安航空会社やチャーター便などはありますが、これはこれで別のビジネスモデルです。
 いろいろ議論はあるでしょうが、通常の定期運航する航空会社にとって、重要なのはビジネスで乗ってくれる、つまり多少高くとも航空券を買ってくれ、それも何度も乗ってくれるお客が重要なことであることは、理解していただけると思います。
 であるとすれば、そういうお客はどこにいるのでしょうか。日本の大企業の本社が集中し、本社でなくとも国際関係の部署がおかれている土地、すなわち東京に多くそうしたお客がいるわけです。ですから、航空会社は首都圏への乗り入れを希望するわけです。
 お客がいるから、そこでサービスを提供して利益を上げようとする者が集まる。サービスを提供するものがそこにいるから、お客が集まるわけではないことは、お分かりだと思います。

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 さて、こうした状況にあって、海外から見ると、日本の空港政策を見ると、理解しがたいことは想像に難くないはずです。
 
 中部や関西といった空港整備に、資金を投入するのであれば、むしろ首都圏の空港整備が先ではないかという考えになるのです。
 「国際空港を整備することで、国際線が就航し、海外からの投資の誘致材料になる」という主張もあります。しかし、よく考えてみると、順序がおかしいのです。国際空港を整備しても、お客がいなければ航空会社は就航させません。海外からの投資が増えるような魅力的な地域経済を形成し、訪問するお客が増えて、初めて航空会社は新規路線として就航させるのです。航空会社は、儲からない路線には飛ばしません。

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 首都圏の空港を整備し、成長著しい周辺各国の空港との激しい競争を戦う。そして、日本国内各所からは、小型機、中型機で首都圏の空港との利便性良く接続を行う。
 実は、これこそがハブ・アンド・スポーク理論そのものなのです。首都圏からわずか300キロメートルの中部、500キロメートルの関西、それぞれがハブ空港を目指すというのは、理論そのものに反するものだと言えます。

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 私が航空会社に勤務していた頃から、日本の国際空港は首都圏の三空港が、きちんと整備されれば、ほかに巨大な空港は必要ないという意見が多く聞かれました。
 その三空港は、成田、羽田、そして横田です。

 成田は、長距離国際線。欧米などの長距離路線は成田に集中。
 羽田は、近距離国際線。便数も多い韓国、中国、台湾、香港などの近距離路線は、羽田を再国際化することで対応。
 そして、最後の横田は、中距離国際線。東南アジア諸国などは、横田の返還、もしくは軍民共用で対応。
 
 これが、日本の国際線運航の体制は十分。近隣諸国に対抗するためには、これが一番の体制だと、私も思います。
 もちろん、震災など災害の多い日本ですから、首都圏の三空港の「もしも」のために、代替空港を用意する必要はあります。しかし、それ以外、巨大空港を建設する必要性は無いでしょう。(というか、無かったのです。)

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 しかし、たいてい、ここまで話してくると、「横田ってどこ?」と聞かれることが多いのです。
 横田は、現在、在日米軍の基地です。都心から約40キロメートル。広大に敷地に、ジャンボジェット機が離発着可能な滑走路があります。
 日米安保条約との関係や、周辺の騒音問題など解決すべき点は山積なのですが、石原慎太郎都知事は、公約として横田飛行場の民間利用を掲げており、さまざまな働きかけを政府にしています。石原知事は、混雑する羽田空港の離発着枠の有効活用のために、国内線の一部を横田に回すことを提案しています。

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 さて、ここまでお読みになった方たちは、いろいろご意見をお持ちだろうと思います。その可能性から、日米の軍事協力、石原知事の考えに至るまで、種々でしょう。
 しかし、ここでお話したいのは、こうした首都圏の動きを勘案した上で、中部なり、関西なりの空港政策が立てられているのだろうかという点なのです。

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 関西国際空港にしろ、中部国際空港にしろ、「ハブ空港としての機能」という文句が打ち出されています。しかし、それを書いている人は、本気で書いていたのでしょうか。それとも、まず建設ありきで、無理を承知でそう書いていたのでしょうか。恐らく後者でしょう。
 
 首都圏に負けないような空港を、中部にも、関西にも作る必要があると主張する人に、「横田って知っていますか」というと、多くの場合、きょとんとされます。
 もちろん、ご存知でも、「今の日米安保の下で、米軍がそう簡単に手放さないだろう」という意見をおっしゃる方がたいていです。それは、そうでしょう。しかし、これから先、どう動くかなど想像はつかないことです。

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 関西国際空港の二期工事が行われ、滑走路が増設されたことの影響で、中部国際空港の国際便のいくつかが関西に移されるということが起きました。今、中部の政財界は、中部国際空港も、それに対抗して二期工事を行うべきか否かで、二分裂しているようです。
 
 国内の地域ごとの競い合いはいいのですが、オール日本で見た時に、果たしていくつも「ハブ空港」が林立するのがいいことなのでしょうか。
 個人的には、競争相手は成長著しい周辺諸国の空港であり、オール日本で対抗するためには、首都圏の空港の充実を急ぎ、地方空港は、その首都圏の空港との連絡を向上させることが重要なのではないかと考えています。「首都圏集中をこれ以上、進めるというのか」というお怒りの意見もあるでしょうが、こと国際空港に関して言えば、もう少し大所高所からの視点が必要であると考えます。

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 空港、航空に関しては、多くの、結構、専門家の人たちと話しても、なにか理想というか、空想的なものをお持ちな場合が多くて、困ることがあります。
 先にも書きましたが、航空会社は、儲からない路線は飛ばしません。いつも説明する時に申し上げるのですが、「新幹線の駅を作れば、最低でも各駅の列車は止まります。仮に一時間に1本しかなくても。しかし、飛行場を作ったからといって、飛行機が飛んでくるとは限りません」とお話するのですが、わかってくださらない方が多くいます。関西国際空港に関しても、中部国際空港に関しても、開港前にその必要性を述べた報告書や書籍をたくさん出しています。以前にそれらを縦覧してみたことがあるのですが、失礼ながら、わざと専門家や業界の人を排除したに違いないと思えるほど、「夢」と「空想」をいかにも現実のもののように書かれていました。こうしたものに、今も多くの人たちが惑わされているとしたら、それは大きな罪でしょう。

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 自分の地域にも立派な国際空港をと思うのではなく、むしろ首都圏の空港といかに利便性を高く結ぶべきなのかを考えることの方が、ハブ・アンド・スポーク理論に合致したことだと思います。
 
 名実とも日本国内のハブ空港となっている羽田空港の雑踏の中に身をおき、建設の進む国際線ターミナルを見るたびに、各地で「ハブ空港の建設」を主張する人たちが、その意味を正しく知り、横田をはじめとする首都圏の空港の状況を知った上で発言しているのだろうかと思うのです。
 
 知った上で、戦略を持って空港建設を推進していただいているのならいいのですが、「夢」や「空想」をそのままにしているようでは、今、すでに始まっているアジアの航空競争、空港間競争で戦うことは難しいのではないか、そう思っています。
 
 関西圏や中部圏の空港をどうするかという議論に関しては、行政も財界もそろそろきちんと専門家や業界に詳しい人たちを集めて、現実を見据えた戦略を立てる時期になっていると思うのですが、いかがでしょう。

[E:memo]画像は1984年当時の横田基地。撮影は筆者。

[E:pc]参考

東京都『横田飛行場の民間航空利用』
 
  
 
 

Gayas7cw  また電車が止まっている。それにしても多すぎないだろうか。人身事故、踏切の警報、線路内への立ち入り、橋桁への追突、などなど理由は様々だが、あまりにも多すぎないだろうか。
  
 「JRが私鉄に対抗するために、路線の直通運転を増やしたために、影響が広範囲に及ぶだけでなく、運転パターンが複雑なために一旦問題が起こると復旧するまで時間がかかるようになった。」

 「以前の事故の教訓から、事故が発生すると安全第一で、長時間止めるようになったから。」

 「景気が良くなったと言われるが、依然として困窮する人は多く、自殺が後を絶たないからだ。」

 「マナーが低下し、車内での迷惑行為や、駅や線路へのいたずらが増えている。」

 「鉄道関係も、それに関係する、例えば事故を起こすトラック運転手も含めて、技術や技能が低下している。」

 どれも分かる気がするし、目にする光景や、実感からも納得できる。

 こうした傾向は、どうも首都圏でも同じようなものらしい。
 
 時計代わりに使えると評されてきた日本の鉄道だが、いつも遅れ、いつ動くか分からないという風になったのは、どういうことなのだろう。

 どこに問題があるのか。上記のどれが主因なのか、電鉄会社は情報を公開し、必要があれば広く議論すべきなのではないか。

 運転が再開され、遅れを取り戻すためにスピードを上げる車内にいると、もう起こるまいとは思いつつ、あの惨事が思い出されるのだ。

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